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「海の駅から」22

土佐清水市のジョン万次郎資料館に展示されている咸臨丸の模型を、草柳俊二さんはアフリカのナイジェリアで作製した。草柳さんは国際プロジェクトのエキスパートである。高知工科大学の教授になる前は、世界各地の国づくりに携わる日々を送っていた。

草柳さんがナイジェリアに行ったのは、8000ヘクタールの原野を切り拓いて、5000ヘクタールの水田を造るためである。灌漑用水路総延長800キロ、農道総延長600キロの巨大な灌漑開発事業のプロジェクト・マネージャーとして赴任した。

人工衛星が撮影した写真に鮮明に映るほど、途方もなく広い工事現場を指揮する一日が終わると、自室に戻り指先に神経を集中させて咸臨丸を組み立てた。模型材料は市販のキットを日本から持って行った。だが草柳さんはある工夫をした。

「主用材は日本製のキットを使用したが、他はできる限り現地で得られる木材に切り替えて使うようにした。水田開発のために伐採した木々の中から、部材を選び、乾燥させ、加工して、模型に組み込んでいった」

ジョン万次郎資料館にある咸臨丸は、作製された場所だけでなく、材料もナイジェリア製だったのだ。この咸臨丸の作製を機に、草柳さんは海外プロジェクトに携わるたびに、現地の樹木を組み入れながら帆船模型を作り続けるようになった。

コロンビアの水力発電工事、インドの港湾工事など、プロジェクトの現場が変わるごとに、それぞれの国の香りがする帆船模型が誕生した。どの国のどんな木が、どの帆船のどの部分に使われているか、それを知っているのは草柳さん一人である。

「自分で作製した帆船模型を見つめていると、現地でのさまざまな出来事が浮かびあがってくる」

草柳さんだけが味わえる精神の贅沢である。 

 

万次郎の航海日誌のカバーに、咸臨丸の帆布が使われているという。それ以外に咸臨丸に使われていた部材は、遺されていないらしい。

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